Music's Gonna Set Me Free...
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先頃発売されたEL&P「Brain Salad Surgery」が表紙の「ストレンジ・デイズ」誌8月号を読んでいてふと目に止まったのが「ウィル・オウズリー」の文字。そういえばオウズリーは今何やってるんだろうか、と思って読み進めていくと、なんと4月30日にナッシュヴィルの自宅で自殺した(享年44歳)という文章で締められており、このエントリーを書いている今もとてつもないショックを受けています。自殺の理由は明らかになっていないためこれ以上の言及は避けますが、なんともやりきれない気分でいっぱいです。プログレとメタルとクラシック・ロックとニッチ・ポップがひとつの誌面に同居する「ストレンジ・デイズ」の編集方針同様、僕もメタルやプログレの他にJELLYFISHMIKATHE MONTROSE AVENUEなどのポップ・ミュージックを好んで聴いていますが、その中でウィル・オウズリーがOWSLEY名義で'99年にリリースしたセルフ・タイトルの1stアルバムは個人的にはJELLYFISH「Spilt Milk」に並ぶオールタイム・フェイヴァリットということで、今回は彼への追悼にかえてこのアルバムを取り上げたいと思います。

オウズリーは地元の友人であったベン・フォールズ(BEN FOLDS FIVE)のツテで知り合ったミラード・パワーズと共にTHE SEMANTICSを結成し、'93年にGeffenと契約して「Powerbill」というアルバムを制作しますが何故かお蔵入りとなり、解散後の'96年に日本のみでリリースされました。その後多くのセッション・ワークをこなして得た資金でスタジオを作り、2年もの歳月をかけて制作されたソロ・デビュー作となる本作は、日本盤の帯に書かれた「今世紀最後のメロディ・メイカー」というキャッチが伊達ではない、珠玉のメロディが満載された捨て曲なしの傑作といえるものです。THE SEMANTICS時代の持ち曲のリメイクとなる"Coming Up Roses""The Sky Is Falling"も含め、奇をてらうことなく、ただひたすらに良い曲を書くという一点のみにこだわった姿勢が何よりも素晴らしく、特に"Sentimental Favorite"は歌詞も含めて泣ける、梅雨時の憂鬱な気分に聴くには最適の1曲です。他にはラストの"Class Clown"も気に入ってよく聴いていました(どちらもYouTubeに動画が上がってないのが残念!なお日本盤にはこの後ボーナスとしてRAMONESへのトリビュート・ソングだという"Mess With Me"を収録)。彼の「最高のメロディが見つかるまでレコーディングしない」「1年以上かけて歌詞を書く」という徹底した完璧主義は、次作となる「The Hard Way」のリリースまで実に5年ものスパンが空いたことでもわかるでしょう。その次作は少しばかりダークでメロウな色合いが増してはいたものの、メロディの輝きは随所に光っていました。それからはや6年、そろそろ新作が出てもいい頃ではないかと思っていたところにこの悲報。派手さはないけれども確実に聴く者の心を捉える、ニッチ・ポップを絵に描いたような存在であったウィル・オウズリーの死はポップ界における多大な損失といっても過言ではないでしょう。

Rest In Peace, Will Owsley...



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SAXONデビュー30周年記念再発シリーズの第3弾にして完結編となる7th~9thの3枚が前回から実に10か月ぶりにリリースされました。まずご紹介するのは'85年リリース、SAXON史上唯一女性のアップを用いた“らしからぬ”ジャケットが物議を醸した7作目です。今回のボーナス曲はリミックス1曲、シングルB面曲2曲、ライヴ4曲の計7曲です。

前作「Crusader」リリース後、金銭面のトラブルなどによりそれまで在籍していたフランスのCarrereを離脱、新たにEMIと契約してさらなるメジャー展開を図った1枚ですが、多くのファン離れを引き起こした前作のキャッチーな路線を更に推し進め、もはや初期の暴走ドライヴィン・サウンドはその面影すら残らないほどに洗練されたサウンド(エコーをかけまくったいかにも80'sなプロダクションが時代を感じさせます)となりました。当然のごとく初期のスタイルに固執するファンからはアメリカ狙いという猛反発を受けることになりますが、硬派なリフとキャッチーな歌メロのバランス感覚が前作より優れており、個人的にも別に本作を傑作というつもりはありませんが、これはこれで“アリ”だと思える良質なメロディアスHR作品になったと思っています。確かにキャッチーにはなったものの、アルバム中に漂う雰囲気は紛うことなきブリティッシュだし、よく言われる“アメリカナイズされたブリティッシュHR”と“アメリカンHR”はやはり似て非なるものだということを本作でも実感できるのではないでしょうか。ラストの"Give It Everything You've Got"はモロにVAN HALEN "Hot For Teacher"ですが。

ボーナス収録のうちシングルB面扱いだった2曲は本編曲よりストレートに疾走するHMソングで、アルバムの雰囲気に沿わないため外れたことが容易に想像できますが、こっちのほうを気に入る人たちは多いような気がします。ライヴ・テイクのうちメドレーでは初期曲の"Heavy Metal Thunder" "Stand Up And Be Counted" "Taking Your Chances" "Warrior"をプレイしていますが、メドレーということでテンポを統一したためか、"~Thunder"が思いっきりスローになっているのがあまりにも残念。残りのライヴ3曲は本作の収録曲で、もはやライヴでは永遠にプレイされることはないでしょうから、ある意味貴重です。
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高音質CDの登場から1年が経過し、今年の日本における紙ジャケ再発はさらにヒートアップした感がありますが、その中で「新規リマスター+高音質CD+日本初回盤の帯復刻」という黄金パターンが、YESに続いてKING CRIMSONの好セールスによって完全に確立されたといってもいいでしょう。そんな中、一部で今年最後の紙ジャケ再発の目玉といわれていたMC5のオリジナル作3作がその黄金パターンを踏襲して先頃発売されました。僕が購入したのは勿論、1stにしていきなりライヴ・アルバムという今では絶対ありえないデビューを飾った'69年の歴史的名盤「Kick Out The Jams」ですが、まさに期待以上の仕上がりを見せてくれました。

やはりなんといってもこの帯。僕は帯付き日本盤オリジナルLPは現物は勿論写真でも見たことがなかったので、ジャケット全面を穴あきの帯が包み込む仕様になっていることは知らなかったのですが、まさかこれを再現してくるとは。上には「キック・アウト・オブ・ザ・ジャムス」と勝手に「オブ」を加えたタイトルの間違いもそのまま再現。そして裏面ではライナーノーツも書き込まれ、帯を開くと内側に歌詞も印刷されています。ここまでやってくれれば文句のつけようもありません。リマスターに関する詳細なクレジットは表記されていませんが、音質も以前のCDと比べて格段に向上、より臨場感のあるサウンドを実現しています。紙ジャケ再発の市場ではユニヴァーサルとワーナーがしのぎを削りあっている印象がありますが、近年CD盤面にタイトルとアーティストしか書かず、LPのレーベルを紙に印刷したものを添付するという手抜きが目立つユニヴァーサルに対し(その反面、デフジャケを積極的につける姿勢は評価できますが)、CD盤面へのレーベル印刷も抜かりないワーナーが今回決定版といえるMC5を出したことによって完全に一歩リードしたといってもいいでしょう。実際、今作は既にAmazonでもHMVのサイトでも「お取り寄せ」状態となっており、瞬殺は必至といえるでしょう。
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今年15年ぶりの復活を果たしたジャパニーズ・スラッシュの雄SHELLSHOCK。3月に1stアルバム「Mortal Days」の再発盤をご紹介した際に「残ったカタログの再発に期待」と書いたら、なんとその残りのカタログとなる2nd「Protest And Resistance」、3rd「Fiel Larm」、EP「Graythem...Of Chaos」3作が一挙にリマスターされ、さらにライヴ映像を収めたDVDをプラスしたボックス・セットとしてリリースされました。これは本当に嬉しい。

1stのスラッシュ・メタル路線にハードコア色を持ち込んでよりアグレッシヴなスタイルを目指した2nd、Masami "Die" Chiba(Vo,B)が全面的に主導権を握り(これはDVD収録のインタビューでも語られています)、インダストリアル、グラインド・コアまでも持ち込んでさらなるアヴァンギャルドなサウンドへの大変身を果たし、今では早過ぎた名作と評価されている3rd、スラッシュ色を完全に一掃してファンク、テクノ、ヒップホップまでも取り入れてアヴァンギャルド化が行き着くところまで行き着いたEP、どれもが圧倒的な聴き応えを誇りますが、リマスターによりボトムの音がより強調されており、特に曲は最高だったものの音の軽さが残念だった2ndにその効果が如実に表れています。EPにボーナスで追加された解散直前の'94年のライヴ音源はモノラル録音で音質こそ極悪ですが(元々音源化を前提としていないわけですから当然ですが)、さらに暴力性を増した演奏に加えてエレクトロニクスのさらなる導入とアレンジの拡張によって、アルバムの世界観をより拡大しようとするプログレッシヴなライヴを指向していたことがよくわかる興味深い記録となっています。このライヴ音源とラストに収められた"System Kills"を聴くと、どことなくKING CRIMSONに通じるムードを感じさせます(ライヴの音の悪さは「Earthbound」を彷彿させ、"System~"でモロに"Red"から借用したフレーズが飛び出すあたりは...)。DVDに収録された'92年KREATOR来日公演の前座のステージはDieのパフォーマンスを中心とする圧倒的な演奏力が強烈なインパクトを残しており、これが世に出てくれて本当に良かったと思える貴重な記録です。一方、再結成2度目のステージとなるライヴ映像は残念ながら全曲フル収録ではないダイジェスト版ですが、まだ試運転的な色合いも感じさせるため、俺達はまだまだこんなもんじゃないという意思を感じさせます。

それを証明するかのように、これまでのAkilla Ito(Vo,G)、Masami "Die" ChibaMasaru Key-mao(Ds)というトリオ編成に加え、先日のライヴより元SAVAGE GREEDNorikaz Saeki(G)が加入し本格的な戦闘体制を整えたSHELLSHOCK、今後のアルバム制作にも期待が高まります。
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今回で最終回となる「初期スラッシュの素晴らしき世界」で取り上げるのは先日最終作「Infini」をリリースしたカナダのVOIVODです。このトピックでは'84年から'86年にリリースされたアルバムに限定して取り上げてきましたが、VOIVODがこの時期にリリースした2作はどちらも初期スラッシュの魅力全開の甲乙つけ難い力作ですが、ここではアルバム・タイトルがその凄まじさを物語る'86年リリースの2作目「Rrröööaaarrr」をセレクトすることにしました。

ここ日本ではサイケやプログレを取り入れた知的なスタイルに移行してからの評価が高く、ジェイソン・ニューステッドの加入によってその評価は決定的なものとなりましたが、ヘッドバンガーにとっては初期2作の知性のカケラもない爆裂スラッシュ路線への思い入れのほうが強いことでしょう。前作1st「War And Pain」で示した、ノイジーなギターと暴走するリズム、闇雲にわめき散らすヴォーカルが一丸となり、整合感一切無視で怒涛の如く襲いかかるハードコア・パンクと紙一重の爆裂サウンド(当時自らこの音を「ニュークリア・メタル」と称した)をさらに強化した、今にも鼓膜をぶち破らんかとするかのような爆音のオンパレードはただただ圧巻の一言。原始的な衝動をひたすら熱くブチまける演奏ぶりはメタルどころかロックの原点をも感じさせますが、その一方でギターの不協和音や変則的なリズム・パターンなど、後の変化を予感させる要素も垣間見せています。前作はリマスター化されてより破壊的な音になり、今作もぜひリマスター化を期待したいところですが、現在音源の権利を持つSanctuaryがメジャーのUniversalの傘下に入ったため、俺達のアルバムなんてリマスターしてくれないだろうとメンバーは語っていました。

こうして初期スラッシュの名盤を立て続けにご紹介していきましたが、こうして自分でまとめていくと以前ははっきりとは判らなかった“スラッシュ”と“パワー・メタル”の違いというものがよく見えてきたような気がします。それは“ヴァイオレンス”の有無という一点に集約されるということです。たとえば“歌う”ヴォーカルを擁したMETAL CHURCHがパワー・メタルと呼ばれるのはよくわかりますが、同じくヴォーカルが歌いまくるANTHRAXはなぜスラッシュとしか言いようがないのかといった疑問も、これで解決できるような気がしています。このシリーズをやるきっかけとなったEXODUSの1stについてのエントリーで書いた、「スラッシュ・メタルというタームは“暴力性”を指しているのではないか」ということが、このシリーズを書いていてはっきりと確認できたような気がします。また、初期スラッシュ特有の洗練とは程遠い荒々しい演奏は当時日本ではほとんどまともに評価されませんでしたが、それが多くのファンの心を動かしたのは紛れもない事実であり、ロックに演奏の巧いもヘタも関係ねえ、ということを改めて実感させてくれました。いつかまた機会があったら一つのジャンルをスポットを当てたシリーズをやってみたいと思います。
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1つ前のエントリーでご紹介したPOSSESSEDを始め、初期スラッシュ・メタル・バンドにはお世辞にも演奏が巧いとはいえないものが多かったのですが、その中でも“お世辞にも”という次元を遥かに超越し、とにかく最悪としか言いようのない演奏を披露したのがブラック・メタル時代の初期SODOMでした。

今回ご紹介する'84年リリースのデビュー・ミニ・アルバム「In The Sign Of Evil」には後のパブリック・イメージとなるトム・エンジェルリッパーの極道シャウトを始めとするMOTORHEAD譲りの極悪イメージは殆どなく、むしろVENOMを直接のルーツとするサタニックなイメージで押し通していましたが、その中で最も強いインパクトを与えたのが最悪の演奏ぶりとチープ極まりない音質。出だしこそなんとかしっかりしているものの、曲が進むにつれてギター、リズム、ヴォーカルのすべてが少しずつズレていき、サビまでいくともう殆どカオスとしか言いようがない状態になっていく。人によってはとてもじゃないが聴いていられないような代物ですが、これがまた邪悪なイメージを演出するのに最大限の効果をあげているという奇跡を起こしています。当のエンジェルリッパーは一時期本作を自身のキャリアから抹消したがっていた感もありましたが、この時代としては破格ともいえる邪悪さが多くの後続にインスピレーションを与えたこともまた事実であり、「Code Red」の初回盤ボーナスCDとして制作され、デス、ブラック勢が多数参加したトリビュート・アルバム「Homage To The Gods」には本作と次作1stフルレンス「Obssessed By Cruelty」からの曲が殆どを占めていました。エンジェルリッパーも後にそれに触発されるかのように本作を丸ごと当時のメンバーで再録音し、未発表曲も追加した「The Final Sign Of Evil」を'07年にリリースしましたが、意図的にローファイな音質にしたのはよいものの、演奏力の向上がかえって当時の邪悪さを完全に蘇らせるのを妨げており、やはり本作はあの時代だからこそ作り得た奇跡だったということを実感させる結果となりました。
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初期スラッシュ・メタル・バンドの中で、後続のスラッシュ勢を飛び越えてデス、ブラック・メタル方面に多大な影響を与えたバンドにはBATHORYBULLDOZERSODOMなどもいましたが、活動期間が短かったこともあり特にカリスマ視されているのがPOSSESSEDです。当時メンバーが現役高校生であったことも話題になりましたが、音を始めとしてあらゆる面でその若さを大きく反映していました。

その中でもやはり特徴的なのはとにかくヘタとしか言いようがないドラムの演奏で、リズム・キープこそ一応しっかりしているものの、キメやオカズになるとモタる、ズレるは当たり前。他のメンバーがよくこれにあわせてプレイできるものだ、と逆に感心してしまいます。しかしこのドタバタ加減が当時の「今、何としてもこれをプレイしたいんだ」という衝動性を破天荒な勢いのある音へと転化させており、結果的には本作を名盤たらしめる最大の要因になったわけです。「ヘタなものは認めない」という風潮が今なお根強い日本でそれが受け入れられるはずもなかったのですが...。逆にギターがメチャウマだったのがこのバンドの面白かったところで、ツイン・ギターの片割れラリー・ラロンデはPOSSESSED解散後、BLIND ILLUSIONを経て同バンドで知り合ったレス・クレイプールと共にPRIMUSを結成。ラロンデはこの事実を隠したがっていましたが、別に隠すことでもないだろう、と今となっては思います。若手の人気女優やエイヴェックスあたりにいる歌手がB級アイドルだった過去をキャリアから抹消したがるのとはワケが違うんだし。
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「初期スラッシュの素晴らしき世界」の4回目はいよいよMETALLICAの登場です。METALLICAで僕の考える初期スラッシュ像に当てはまるアルバムは当然1stと2ndということになりますが、これまで取り上げてきた初期衝動が先走っていたDARK ANGELKREATORMEGADETHとは異なるタイプの2ndをセレクトすることにしました。

やたらとその速さばかりが取り沙汰されたデビュー作に対して、ミドル・テンポの曲を主軸に据え、さらにはバラード・タイプの"Fade To Black"までも果敢にプレイするなど、前作で自らが作り上げたスラッシュ・メタル像を2ndにして早くも壊しにかかった本作ですが、僕が(そしてその他大多数のファンが)このアルバムにどうしようもなくスラッシュを感じるのは、やはり'84年という時代において破格の暴力性を備えていたからに他ならないでしょう。その象徴はなんといってもフレミング・ラスムッセンと共に開発したヘヴィで濃密なギター・サウンド.。後にベイエリア・クランチへと受け継がれる重さを持ちつつも、切れ味よりも破壊力を重視した、狂気とガムシャラさをそのまま音に置き換えたかの如く激しく唸るリフが聴き手の暴力衝動を否応なくかき立てる。"Die! Die!"の大合唱と共に何千何万もの拳が突き上げられる"Creeping Death"は言うに及ばず、"Fight Fire With Fire""Ride The Lightning"の中盤のギター・ソロ前後の展開はまさしく鳥肌ものの格好良さというしかありません。本作で示された勢いと新たに提示した叙情性をより高い完成度で集約したのが次作「Master Of Puppets」になりますが、あっさり集約し尽くしてしまったが故に、それ以降はまた新たな路線に踏み出していくことになるわけです。
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「初期スラッシュの素晴らしき世界」の第3回目は、現在絶賛発売中の新作を差し置いて、あえて1stを取り上げたMEGADETHです。MEGADETHもやはり本作リリースの'85年の時点ではたとえ元METALLICAという肩書があろうとも、そのあまりの音の悪さが足を引っ張って他のスラッシュ・バンドと同様の不当評価に遭い、しまいには「メガデスは芽が出ず」という今ではとても考えられないようなダジャレまで飛び出す有様。少なくとも'85年の時点で、日本でMEGADETHをマトモに評価している者はほぼ皆無に近いといえるような状況でした。

そして本作の真価がはっきり世に示されたのは、'02年にリミックス、リマスターに加えてジャケットも変更された新装盤が発売された時でした。オリジナル盤でのとにかく極悪としか言いようがなかった音質は劇的に改善され、初期MEGADETHの“インテレクチュアル・スラッシュ”の原点がはっきりと確認できるようになりましたが、本作で際立つのは知性よりもむしろ、今にも溢れ出さんばかりの怒り。ギターとベースが必要以上の音数でこれでもかと弾きまくり、ドラムも手数足数を駆使してラウドに叩きまくる。当時のムステインを動かしていたのは自分をクビにしたMETALLICAへの怨念といわれていますが、それがそのまま音の塊と化したかのような過剰なまでの激情の噴出。同時期の他のスラッシュ・バンドとはやや毛色は異なっていましたが、本作もまた初期スラッシュならではの生々しいエナジーを放射していました。
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初期スラッシュ・メタルが当時の日本ではメタル・ファンからさえも「こんなもの音楽じゃねえ」という非難、罵声、嘲笑を浴びていたことはご存じかと思いますが、当時その波をモロに被ってしまったのがKREATORだったといえるでしょう。今回ご紹介する'86年リリースの2ndの時点ではその声はピークに達していた感があります。なにしろ本作の後にリリースされたEP「Flag Of Hate」は「この調子で8曲入りLPを作られた日にゃ、焼身自殺したくなる」とボロクソにこき下ろされ、4点を献上される情け容赦ない酷評ぶりでした。しかしこの頃のKREATORはそんな奴らを即座にぶっ殺してやる、といわんばかりの無上のヴァイオレンスを体現していました。

本作までは後のKREATORのパブリック・イメージとなるミレ・ペトロッツァのヒステリックなシャウトは殆ど聴かれず、ミレとヴェンター(Ds)が曲ごとにリード・ヴォーカルを分け合う体制でしたが、ここでのミレのヴォーカルもその後とは違った邪悪なイメージを打ち出しており、これはこれでクールだったと思います。そしてタイトル・トラックをはじめ、"Death Is Your Saviour""Under The Guillotine"といった曲名からも想像がつく通りの過激さ、殺戮衝動を全面に押し出して全速力で突っ走るサウンドがまさに初期スラッシュならではの容赦ない暴力性をリアルに伝えきる。次作以降のアルバムではこのムードは徐々に薄れていきますが、これは当時の若さがあったからこそ成し得たものであることは言うまでもありません。現在のスラッシュ・リヴァイヴァルの若手でもこの生々しさまでは描ききれないでしょう。
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世間がTHE BEATLESのリマスター再発盤リリースで盛り上がる中(しかしあれだけ高額なボックス・セットが瞬殺というのはやっぱり凄い)、僕はキングレコードのCombat紙ジャケ再発を機に再びスラッシュ・メタルを聴き込むようになっていきました。今回からしばらくの間、まだスラッシュ・メタルが市民権を得ていなかった頃の'84~'86年頃にかけてリリースされた初期スラッシュ・メタルの名盤を立て続けにご紹介しようと思います。

まずはLAのDARK ANGELが'86年にリリースした2作目からです。このブログでは以前に最終作となった4作目Time Does Not Healをご紹介しましたが、そこで「速さと暴力性こそがスラッシュ、という人にとってはコレ」と書いていたアルバムです。LAといえばSLAYERの出身地でもあり、この'86年には「Reign In Blood」をリリースしていますが、その裏でひっそりとリリースされた本作は速さという点では完全に上を行っていました。その最大の原動力となったのは当然、本作より加入した千手観音ドラマー、ジーン・ホグランの猛烈なドラミングであり、それに引っ張られるかのように無茶とも思えるほどの速さでせわしなく繰り出されるリフが、未だ色褪せない凄まじい破壊力を生み出しています。歌詞は死と破滅を題材にしたものばかりですが、まるで今やらなければ自分達が死んでしまうと言わんばかりの性急さと切迫感で突っ走る猪突猛進ぶりが本作の最大の魅力といえるでしょう。昨年Century Mediaからの再発時にライヴ8曲がボーナスで追加され(ヴォーカルはロン・ラインハート)、先日の紙ジャケ再発でもこのフォーマットが使用されています。
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創刊25周年記念号となった今月のBURRN!誌の記事で個人的に最も目を引いたのが「スラッシュ・メタルの25年」でした。最初目にした時にはまた単なる懐古趣味かよ、と思いきや、シーンの当事者から近年の若手まで幅広い世代のミュージシャンへのアンケートに思わず見入ってしまいました。その中でも最も興味深かったのがMANTIC RITUALのダン・ウェットモアで、先日発売されたデビュー作で徹底的にオールドスクールなスラッシュを演っていた人物がスラッシュ・メタルを「カテゴライズのためのラベル以外の何物でもない」と言い切り、「多くのスラッシュ・ファンは考え方が偏狭で、そのことが音楽の創造性や進歩を妨げていると思う」と語ったのは実に痛快でした。しかしそのウェットモアは先日、フォトグラフィーに専念するためバンドを脱退してしまいました。

この特集が組まれたのは今月キングレコードからCombat Recordsのスラッシュ・メタル・アルバム22タイトルが紙ジャケットで再発されることに関連したものだと思いますが、その中でも最大の目玉はEXODUSの1stが初めて日本盤としてリリースされることでしょう。今回のアンケートでの「お気に入りのスラッシュ・アルバム」でブッちぎりのNo.1を勝ち取った本作がスラッシュ・メタルの歴史的名盤として語り継がれる理由として、その音楽もさることながら、何よりも“アティテュードとしてのスラッシュ・メタル”がこの1枚にすべて凝縮されているからだと僕は考えています。スラッシュは元々メタルが持っていた速さ、激しさ、怒りというコアな側面のみを突き詰めたものと僕は解釈しますが、スラッシュ・メタルが登場した80年代前半の作品の中で、最もそれを端的に表現していたのが本作でした。速さという点で本作を上回るものはいくつもあったし、演奏もお世辞にも完璧とはいえないものがありましたが、本作で表現される、スラッシュらしい怒りや暴力性は今なお強いインパクトを残し、しかもそれはここにきてさらに凄味を増しているように感じます。ゲイリー・ホルトがしばしば口にする“スラッシュ・メタル”というタームは、物理的な速さよりも“暴力性”を指しているのではないでしょうか。特に再結成後のアルバムにはその意識が強く反映されているように感じます。"A Lesson In Violence""Strike Of The Beast"なども勿論最高ですが、"Exodus"のリフは未だもってキラー!昨年発売された本作の再録盤「Let There Be Blood」でもその格好良さは奇跡的ですらありました。
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YESのほぼ全タイトル瞬殺に端を発する新規リマスター+高音質CD化+国内LP初回盤の帯復刻という“紙ジャケ再発・勝利の方程式”ですが、今回ユニヴァーサルは1つ前のエントリーでご紹介したリック・ウェイクマンの他にBLACK SABBATHでもこの方程式を踏襲しました。特にSABBATHの場合は帯付きのオリジナルLPは中古盤屋の店頭はおろか、ヤフーオークションなどでも殆ど見かけることができないため、テイチク、ビクター、ストレンジ・デイズ、ストレンジ・デイズSHM-CDに続いて実に5回目の紙ジャケ再発となる今回はまさに決定版といえる形になったのではないでしょうか。しかし、そのラインナップの中で最も早く店頭から姿を消したのがオリジナルSABBATHのカタログ中でも特に評価の低い本作であったというのはなんとも皮肉なものを感じます。恐らく本作が紙ジャケ化されるのは初めてだったからだと思いますが、こういうことになるなら(今回何故かラインナップから漏れた)「Never Say Die」も出しときゃよかったと、今頃ユニヴァーサルは思っているのではないでしょうか。

本作の帯でSABBATHは「パープル、ツェッペリンと並ぶブリティッシュ・ハード・ロックの御三家」と称されていますが、唯一来日公演を行わなかったことと、音楽的に日本人好みの明快さに欠けていたもあり、当時日本における評価は他の2組に大きすぎるほどの遅れをとっていました。なにしろ本作のリリース当時の「ニューミュージック・マガジン(現ミュージック・マガジン)」誌'76年12月号のレビューでは
「音楽の内容よりも話題先行でブリティッシュ・ロック界を泳いできたブラック・サバス」
「ヴォーカルがなんともいやらしい」
「ベテラン・ハード・ロッカーがこの調子じゃ、今後安心してまかせておけませんなぁ」
と見事なまでに酷評されています。実はSABBATH「Paranoid」リリース後の'71年4月に来日公演を行うことになっていましたが、これがトニー・アイオミの病気を理由にキャンセルされ(一応そういうことになっていましたが、後にアイオミは「日本に行くなんて聞いてねえよ」とこの話そのものを否定)、その後オリジナルSABBATHとして日本の地を踏むことはありませんでした。もし'71年の段階で来日していれば、現在に至るまでの評価は大きく違ったものになっていたのではないでしょうか。

で、本作の話に戻ると、キーボードやストリングスを多用したアレンジと、それまでのSABBATHらしいダークネスが音楽、歌詞の両面で後退してよりオーソドックスなHRスタイルに移行したことがファンの反発を買いましたが、それで評価が落ちることはある程度仕方ないとしても、作品単体としては良い曲が多数収められた好盤といえます。オジーは本作がアイオミ主導で作られたことを最大の間違いと断言し、チャート・インすらしなかったこともあって本作をもってオジーは一時バンドを脱退することになります。しかし皮肉にも本作のキャッチーなスタイルは確実にソロ転向後のオジーの音楽性に受け継がれており、今となってはある意味オジーにとってのミッシング・リンク的な役割を果たしている1枚といえるのではないでしょうか。
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7月に発売されたYESの紙ジャケSHM-CDは久々にほぼ全タイトルが瞬殺となり、改めてYESというブランドの威光をまざまざと見せつける形となりました。特に熱帯雨林でのプレミアぶりは凄まじいものがあり、これで新規リマスター+高音質CD化+アナログ初回盤帯復刻という“紙ジャケ再発・勝利の方程式”(勝手に命名)が完全に確立されたといってもいいでしょう。そしてそれに続けとばかりに、今度はリック・ウェイクマンのA&M時代の作品8タイトルがその勝利の方程式を踏襲する形で再発されました。この中で注目はやはり“歴史・文芸3部作”として名高い初期3作になると思いますが、個人的には'73年リリースのソロ・デビュー作となった「ヘンリー八世の六人の妻」が最も気に入っています。

本作はウェイクマンがYESに加入した直後から制作が開始され、YESのツアー中に読んだイギリスのチューダー王朝の2代目国王、ヘンリー8世に関する書物にインスパイアされたコンセプト・アルバムとなりました。本作は全編インストのため、いったいどこにコンセプトを見出せばいいんだ、って気もしますが、それがどうでもよくなってしまうほどに完成度の高い作品に仕上がっています。ウェイクマンによる多彩なキーボード・プレイは勿論のこと、バックのメンバーの演奏(特にYESの僚友ビル・ブラッフォードとアラン・ホワイトのドラムが素晴らしい)に支えられた、クラシックを中心にしつつジャズやフォークなどの要素を見事に一体化した優雅な世界観に加えて、終始ロック的な躍動感が貫かれていることもあって、シンフォニック・プログレの理想的な形が描き出されているといってもいいでしょう。個人的にはジャジーな疾走感が気持ち良い"Ann Of Cleaves"がお気に入りですが、他の曲もコンパクトにまとめられていることもあって、一気に聴き通せます。

本作はインスト作品としては異例の大ヒットを記録し、ウェイクマンがこれに気をよくしたことに加えて他のYESのメンバーとの人間関係が悪化したことにより、オーケストラとの共演ライヴ録音を敢行した次作「Journey To The Centre Of The Eatrh(地底探検)」リリース後にYESを脱退、オーケストラを率いてのド派手な活動を繰り広げていくことになります。結果的にはそれがプログレ衰退の遠因にもなってしまうわけですが、その原点となった本作は未だ色褪せない魅力を放ち続けています。
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ソニーがここにきて80年代ロック/ポップスの紙ジャケ化に乗り出していますが、その中には「トップガン」「フットルース」といった映画サントラ盤も含まれています。今回再発されたラインナップの中で「こんなものまで出すか」と思わず唸ってしまったのが、シルヴェスター・スタローン主演の'87年作「オーバー・ザ・トップ」のサントラ盤です。

本作にはサミー・ヘイガー(当時VAN HALEN)、ロビン・ザンダー(CHEAP TRICK)、ケニー・ロギンスなどが参加していますが、曲は1曲を除いてすべて本作のプロデューサーであるジョルジオ・モロダーの書き下ろしであり、モロダーの楽曲を複数のヴォーカリストが歌うという構成により、サントラとしての統一感を打ち出していると捉えるのが良いかもしれません。その中で異彩を放つのが唯一ASIA名義での参加となった"Gypsy Soul"。この曲にはASIAからは実はジョン・ウェットン一人しか参加していませんが、それでもASIA名義となったのは、ジョン・ウェットンのソロ名義ではアメリカではいまひとつインパクトに欠けると判断されたからでしょう。これまでいくつもリリースされているASIAのコンピレーションにこの曲が収録されないのは、自身が実質ASIAの曲としてカウントしていないからかもしれません。曲自体は本作の他の曲と同様、いかにも80'sという雰囲気を存分に発散したものですが、ウェットンのヴォーカルのおかげでかろうじてASIAっぽさを感じさせるものです。とにかくASIAの音源をコンプリートしたい向きには待望の?再発といえるのではないでしょうか。

映画そのものは日本ではスタローン人気に乗る形でヒットしましたが、アメリカでは大失敗に終わったこともあってこのサントラ盤も今では地味な印象ですが、ヘイガーが歌う主題歌"Winner Takes It All"(ちなみにこの曲にはエディ・ヴァン・ヘイレンが何故かベースで参加)が後に新日本プロレスのスコット・ノートンの入場テーマになったり、ザンダーの"In This Country"がフジテレビのF1グランプリ中継のエンディング・テーマに使用されてヒットするなど、日本では何気に映画サントラの枠を超えたところで重要な1枚だったりします。
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