Music's Gonna Set Me Free...
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RATING: 9/10

2010年の私的ベスト・アルバム選で"Honorable Mentions"に選出した、日本のジャズ・ベーシストによる20年ぶり(!)の新作ということですが、この人については今作を店頭で見かけるまで全く知りませんでした。しかし“21世紀型マンドライヴ・テクノ・ジャズ”というキャッチに引かれて試聴したところ、その凄まじさにブッ飛んでしまった1枚です。

基本はツイン・ベース(濱瀬がフレットレス・ベースによるリード、もう一人がリズム的な役割)にドラム、シンセサイザーというユニークな編成で、全7曲中4曲で菊地成孔(Sax)が参加するという形をとっており、フリー・ジャズをベースとしながらもそこにSQUAREPUSHERAPHEX TWINAUTECHREあたりから影響されたと思しきエレクトロニカの要素を大々的に取り入れた、おおよそジャズというタームから想像されるスタイリッシュなイメージなど皆無の凄まじく暴力的なサウンドを展開していきます。曲によってはジャズのイディオムから逸脱した暗黒ヘヴィ・プログ(判り易く言えば「太陽と戦慄」期のKING CRIMSONあたりをもっと暴力的にしたような感じか)に通じる場面もあり、その手の音を好むリスナーにもアピールし得るものも感じられます。

全体的な質感は上記のエレクトロニカ系に通じるひたすら硬質なものですが、ウルトラ・ヘヴィなバスドラにアタックの強いスネアで疾走感を生み出すドラム、高速フィンガリングとスラッピングでボトムを支えつつ、時に猛烈なオブリガードを入れて周囲を煽るリズム・ベース、時にアンビエント、時にノイジーな音色で不穏な空気を醸すシンセによる無慈悲なまでに荒れ狂った音の中で、濱瀬が蠢くような音色でインプロヴィゼーションを繰り広げる(そこにサックスが絡んでさらにアヴァンギャルドになっていく)サウンドはフィジカルな躍動感に溢れ、生演奏ならではの緊迫感にひたすら引き込まれて離れられなくなる、途轍もない求心力を備えたアルバムといえるでしょう。ちなみに今作はタイトルの通りライヴ録音で、シーケンサーの類は一切使っていないらしいですが、曲が終わって拍手が聞こえるまでライヴだとは判らないほどの正確無比な演奏。これは生で観たらもっと凄いと感じられることでしょう。またリーダーの濱瀬氏は現在58歳。この歳にしてこれだけのアグレッシヴな感性を持っているというのが素晴らしいですね。

 
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RATING:8/10

この現代において“レーベル買い”ができるほぼ唯一のレーベルとなったRise Aboveが新たに送り出した、今時よくこんなシンプルなバンド名をつけることができたなぁと思わずにはいられないスウェーデン出身の6人組(各メンバーの素性は一切不明)のデビュー作。NWOBHMや80年代前半のダーク・メタル系に通じるオカルティックなHMサウンドで、隙間の多い音作りとキーボードがいかにも近年のRise Aboveらしいシケた雰囲気を感じさせますが、ソフトながら怪しさを醸し出すヴォーカルがサビにくると哀愁に満ちたメロディを歌い込み、それが決してミスマッチになっていないのが面白いところです。はっきり言ってオールド・ファン以外には決してアピールしないであろうスタイルですが、好きな人はとことんハマりそうな魅力を備えた1枚といえるでしょう。

 
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RATING: 8.5/10

テキサスのグラインド・コア・バンドのRelapse移籍第1弾となる2年ぶりの3作目。BRUTAL TRUTHらと共にUSグラインド・コアをリードしていくと思われたINSECT WARFAREがあっけなく解散し、しばらく活きのいい若手が出てこなかった(いるとすればMAGRUDERGRINDか)このシーンの中で、このバンドはアルバムを重ねるごとに怒りのパワーを増大し、この手の王道グラインド・コアの中でもトップ・クラスといえる破壊力を獲得したといえるでしょう。ブラストの速さもさることながら、とにかくギターの音圧がハンパない。このギターが時折ミドルを挟みこんでも一切ドライヴ感が落ちないリズムと共に怒涛の音の塊を作り上げ、すべてを強行突破せんとするかの如き勢いで暴走し続ける。その音塊をバックに咆哮するヴォーカルも終始切迫感に満ち溢れており、そのリアリティにただ息をのむばかり。しばらくは僕にとってのグラインド・コアの決定版となりそうな1枚です。

 
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RATING: 9/10

DISARMONIA MUNDIのエットレ・リゴッティのプロデュースによりデビューしたイタリアの5人組が再びリゴッティのプロデュースで制作した3年ぶりの2作目。このジャケット(実際のパッケージは描かれているキャラクターが薄くプリントされています)にただならぬ雰囲気を感じて聴いてみたらこれが大当たりだった、という1枚です。元々前作の時点で通り一遍のデス、スラッシュとは異なる雑食性を随所に感じさせましたが、今作ではその雑食性を全面的に解放し、メタルコア方面のキャッチーな色合いに傾きつつ、既存のメタルコアとは一味もふた味も異なるセンスとストリート感覚に溢れるアッパーなエナジーで一本筋を通した内容に仕上がっています。特に冒頭の"Double Yeah"のイントロでシャッフル・ビートからそのままポリリズムに切り替わる瞬間に今作の凄さが集約されているといっても過言ではないでしょう。その根幹を成す、カンカン鳴りまくる変幻自在のドラミングには驚嘆の思いしか浮かんできません。全体的にリズムはファンキーな感触ですが、スラッシーなスピード感も存分に活かされており、そこに絡むツイン・ギターもさり気なくハイテク・シュレッディングを盛り込んできます。さらに今作を変態的なものにしているのが独特の歌詞であり、"Home Made Chili Delicious Italian Beef"とか"Panda Vs Koala"といったおおよそメタルとはかけ離れた題材ばかりなのが面白く、今作のやりたい放題加減にマッチした雰囲気を作り上げています。あふれ出すアイディアを見事にまとめ上げて一気に大化けし、閉塞気味だったこの手のスタイルにまだまだオリジナリティを生み出す可能性があることを知らしめた、文句なしに2010年裏名盤の筆頭候補です。



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RATING: 8.5/10

デビューEPのリリース後にWHITE WIZZARDを脱退したジェイムズ・ポール=ルナ(Vo)、ジェイムズ・J・ラルー(G)、タイラー・メアール(Ds)が新たに結成したバンドのデビュー作。一方のWHITE WIZZARDは1stフルレンスをリリース後、またしてもヴォーカルとギター2名が相次いで脱退、相変わらずラインナップが安定しない状態が続いています。

“聖杯”というバンド名やメンバーの構成からはギンギンのトラディショナル・メタルが想像されますが、実際の音はスラッシュやパワー・メタルの色合いが強く、さらにはポール=ルナのヴォーカルがWHITE WIZZARD時とは異なる、M.シャドウズを思わせる熱い声質に変わったこともあって、時折AVENGED SEVENFOLDに通じるムードも感じさせます。強引な形容をするならばENFORCERA7Xといったところでしょうか。トラディショナル・メタルの様式を踏襲しつつ、その文脈から積極的に逸脱せんとする硬質なプロダクションとパワーのバランスが優れており、メタル魂を呼び起こす熱さを現代的な解釈で表現した1枚です。

 

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RATING: 8.5/10

昨年末に急死したザ・レヴ(Ds)の穴をマイク・ポートノイ(DREAM THEATER)の全面参加によって埋めて完成に漕ぎ着けた3年ぶりの5作目。音楽的にはメジャー・デビュー後の2作で顕著に見られた貪欲な雑食性が抑えられ、メロディックな王道メタル・サウンドに統一されています("Danger Line"のエンディングの口笛には雑食性の名残が垣間見えますが...)。曲はすべてザ・レヴの存命時に書き上がっていたということですが、彼の死は間違いなくアルバム全体のムードに影響を与えており、終盤に向かうにつれて荘厳な雰囲気が強くなっていきます。特に"So Far Away" "Victim" "Fiction"あたりの歌詞は紛れもなくザ・レヴに捧げられていると言ってもいいでしょう。それもさることながら、前2作で築きつつあったA7Xらしさが完全に確立されたことこそ、今作で特筆すべきことでしょう。それはM.シャドウズの熱いヴォーカルとツイン・ギターの音色であり、これらがあればどこから聴いてもA7Xの音になる、という次元にまで到達しています。注目のポートノイのプレイはフィル・インなどに彼らしさを垣間見ることができますが、あくまでバンドの意向に沿うプレイに徹しきっており、それもまた今作の完成度の高さに貢献していると言っていいでしょう。

ザ・レヴを失ったことにより、次作以降A7Xのサウンドから永遠に何かが失われることになるのは避けられないでしょうが、悲劇からわずか半年余りでこれだけのアルバムを作り上げたスピリットの強さがあれば、きっと失望させられることはないでしょう。
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RATING: 8/10

NASUM亡き後の北欧グラインド界をリードするフィンランドの4人組によるRelapse移籍第1弾となる6曲入りEP。ジャケットとタイトルで一目瞭然のNAPALM DEATHへのオマージュを捧げた作品であり、後半3曲はそのN.D.のカヴァーですが("The Kill" "The Missing Link" "Suffer The Children")、元曲に敬意を払いつつ、北欧らしいザラついたギター・サウンドと猛烈な音圧により、前半の自身のオリジナル曲と並べても何ら違和感を感じさせないカヴァーに仕上げています。

正直6曲じゃ物足りねえ、というファンの気持ちを読み切ったかのように、今作には2007年の「Obscene Extreme」フェスティヴァルでのステージを全曲収録したDVDがついています。MCを極力カットして全19曲を一気に聴かせきる構成になっており、ストップ&ゴーを多用したメリハリのある流れを生み出すことにより、グラインド・コアの魅力を熟知したヴェテランならではの技が光るエキサイティングなライヴといえるでしょう。異様にクリアなサウンド・ミックスもライヴの迫力を伝えきっています。ヴォーカルとギターはスキンヘッド、ベースはボサボサのミディアム・ヘアということでメンバーのヴィジュアル・インパクトが今一つなのが日本的にはどうかというところですが、これは「EXTREME THE DOJO」に呼んでもいいんじゃないか、という貫禄のライヴです。正直DVDのほうがメインでCDがオマケ、という感も...というわけでレーティングはCD、DVD両方あわせての点数です。
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RATING: 8/10

2年ぶりの7作目。「Dark Ages」以降のスラッシュ・メタル回帰路線は今作でも更に進行、スラッシュを飛び越えてハードコアの領域へも進みつつあり、無駄な展開を省いてより焦点を絞り込んだ音楽性からはもはや初期のトライバル・ビートやワールド・ミュージック色はもはやなかったことになっているかのような感もあります。そのため、曲によってはCAVALERA CONSPIRACYとの差別化がますます図れなくなっており(もっとも、そのCONSPIRACYは来年リリースの新作で更にシンプルなスタイルに移行するようですが)、そのあたりに物足りなさを感じる人が多そうな気配を漂わせます。音自体から伝わる説得力はさすがのものですし、マーク・リゾのギター・プレイが前作より大きくフィーチュアされているのは嬉しいですが、音楽性そのものはSEPULTURAがスラッシュからトライバル・ビートへ移行した道のりを逆行しているのが良くも悪くも興味深いといえるでしょう。それにしても、前作の"Warmageddon"といい、今作の"Vulture Culture"といい、明らかにタイトルが先に浮かんで後から歌詞を作ったかのような頭の悪さはもう少し何とかならなかったのでしょうか。そういうところまで“逆行”しなくてもいいのではないかと思うのですが。

しかし今作のスペシャル・エディションについているDVDに収録されている昨年7月のドイツ公演のライヴ映像はこれらの不満を吹き飛ばす素晴らしいもので、特に中盤の"Enemy Ghost""Refuse/Resist""Doom""L.O.T.M.""Molotov"と爆走チューンを立て続けに繰り出すパフォーマンスは否応なしに燃えました。今作の曲もライヴで聴くときっとよりクールに聞こえることでしょう。一刻も早い再来日を望む。
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RATING: 8.5/10

ノルウェー出身の3人組による2作目。前作は未聴。キーボード、ベース、ドラムというシンプルな編成によるプログ・ジャズ・ロックをプレイしており、特に中心人物であるキーボーディストはキース・エマーソンあたりからの影響を強く受けていそうな感じを漂わせますが、ベースとドラムはハード・ロックばりのラウドな音と弾きまくり叩きまくりのプレイでキーボードと激しく拮抗し、ニッチなジャケットのイメージとは正反対の強烈なエナジーを生み出しています。下の動画でご紹介している"Aviation"のようなスピーディーなジャズ・ロック・ナンバーを中心に据えつつも、サイケ調のムーディーな色合いも同等に押し出されており(ミニマルなベース・リフは初期のSOFT MACHINEを思い起こさせる)、ジャズをベースにしつつ古典的なロックを幅広く包含し、そこに現代的なエナジーとパワーを封じ込めた好盤に仕上がっているといえるでしょう。一瞬マス・ロック系とかぶるような雰囲気も見受けられますが、それらにありがちな理論派っぽいイメージは薄く、あくまでフィジカルな感覚を大事にしていそうなところに好感が持てました。

なお、ここでドラムを叩いているTorsten Lofthusは現在SHININGにも在籍。ジャズを通過したミュージシャンが自由な感性で音楽性を発展させているノルウェーのシーンが面白いことになっていることを実感させてくれます。これからもフォローしていく価値は十二分にありそうです。

 
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RATING: 8/10

NECRODEATHBULLDOZERと並ぶイタリアのカルト・スラッシュ・バンドによる再結成第2弾となる3年ぶりの通算3作目。前作に参加していたベーシストが脱退し、遂にオリジナル・メンバーはギター1人のみとなりましたが、音楽性は'88年の1st「Main Frame Collapse」から何ら変わることのない('94年のEPではインダストリアルに接近したようですが僕は未聴)、ブラスト・ビート主体で無軌道に暴走するグラインド・コアとスラッシュ・メタルのクロスオーヴァー的なサウンドに狂気じみたシャウトが乗るもので、オーヴァーダブを極力抑えたシンプルでシャープな音作りもあって、その音像からは「引きこもりが突如発狂してナイフを持って繁華街の中で暴れ回っている」かのような危険さが伝わってきます。MySpaceに載っているヴォーカルの写真も危険ですが、ギターがやけに普通の人なのがまた怖い。これらもさることながら、これほどのヴェテランが依然として初期衝動をキープし続けているというのが驚嘆すべき事実でしょう。いかにもヴェテラン・バンドといった洗練とは勿論一切無縁、さらには近年の若手バンドの勢いとも距離を置いた、SCHIZOという名前に偽りなしの発狂スラッシュはまさしく唯一無二。最近ではめっきり少なくなってしまった、「何かにムカついて仕方ない時にはナイフを持って立ち上がる代わりにコレを聴け」的な1枚です。

 
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RATING: 9/10

衝撃のデビュー作Apocalyptic Feastingに続く待望の2作目。前作リリース後にリズム・セクションが交代しましたが、持ち前の超絶技巧に何ら陰りが見えることはなく、むしろその技巧をこれでもかと見せつけることにますます自覚的になった感があり(ヴォーカル・スタイルがほぼグロウルに一本化され、楽器陣の演奏に重きを置く方向に進んだプロダクションもその表れでしょう)、その意味では前作にハマったファンの期待に100%応えたものといえます。ノーマル・ブラストとグラヴィティ・ブラストを巧みに切り替えて超高速のまま緩急を使い分ける(妙な表現ですが)リズム・ワークに、もはやどこまでがソロなのかオブリガードなのか判らなくなっているギター、そのギターに自在にまとわりつくベースが交錯する、複雑を通り越してもはや無意味としか言いようがなくなった曲展開のすべてが技巧を見せつけるためだけに存在しており、崩壊と紙一重のアンサンブルを立て続けにキメまくる演奏はもはや芸術の域に到達したと言ってもいいでしょう。だからもうこのバンドに対して「曲の区別つかねー」というのはナンセンスでしかなく、聴き手はこの激音にひたすら掻き回されに行くのが正しい聴き方かもしれません。

唯一曲展開らしい展開が聴けるラストのタイトル・トラックはなんと11分にも及ぶ、ブルータル・デスの限界を突き破らんかとする異例の超大作(ランニング・タイムは16分ですが、すべてを出し切って燃え尽きたかのごとく最後の5分は静寂のSEで締めくくられます)。ここまでやってしまって今度こそ次は大丈夫か、という懸念も湧いてきますが、もうこのバンドはこの路線のまま突き進むしかない。
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RATING: 8/10

2年ぶりの3作目。前作「Scream Aim Fire」は自分達をスクリーモだという連中に対して「俺達はメタルだ」という意思表示として意図的にスラッシーでアグレッシヴな作りにしたということですが、その割にはポップな側面が目立っていてどっちつかずな印象を抱いたものですが、その気負いが無くなった今作では前作同様にメロディアスなヴォーカルが主体ではあるもののポップに行きすぎることなく、元々目指していたであろう80年代型王道メタル・サウンドに現代的な感性を持ち込んだスタイルに方向性が絞り込まれた、というところです。

ドン・ギルモアによる徹底的にプロフェッショナルに仕上げられたプロダクションや、前作よりも力強さを増したとはいえいかにも現代のバンドらしいマット・タックのエモ的な声質、さらにその声で歌われるメロディが今一つ地味なこともあり、前作に感じられた優等生的な印象は今作でもそのままではありますが、前述の方向性の絞り込みや、終盤に速い曲を固めるなど全体の流れに気を遣った曲順の効果もあり、不思議とリピートしたくなる求心力が備わっています。これがライヴだとどうなるのか、という興味も湧いてきますが、ラインナップ発表目前で無くなった「SUMMER SONIC」での来日に代わるものがあるとすれば、やはり「LOUD PARK」か?
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RATING: 8/10

「春のクラシック・メタル祭り」第3弾はイタリアのメロディック・スピード・メタル・バンドによる3作目です。以前からそのクサメロぶりが一部で話題になっていたバンドですが、僕は前2作は未聴でした。しかし今作をCD店で試聴した瞬間、そのメロディの破壊力にやられて思わず買ってしまいました。

とにかくクサい、クサ過ぎる。特にイントロSEに続く"The Spell"はまるで日本人のために作ったのではないかと思ってしまうほどに全編に亘って日本人の琴線をつきまくる歌メロが次々に飛び出してくる。続く"Battleplan"ではRHAPSODY OF FIREを意識したと思しきアレンジが耳を引き、総じてクドいほどに大仰なシンフォニック・アレンジが見事なまでに歌メロとの相乗効果を挙げています。大半が速い曲というのも日本人にとってはポイント高いでしょう。ヴォーカルは線が細い典型的なB級ですが、これ以上巧くなると却って味が失われてしまうのではないかと思うほど、この音楽性にはドンズバといえます。この手の音楽を愛好する層を超えてアピールする次元には至っていませんが、この突き抜けたクサさが僕のような人間をも引きつけるのですから、これは紛れもない高品質のアルバムではないでしょうか。

 
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RATING: 9/10

最近イーサーンの「After」にサックス奏者としてゲスト参加したJorgen Munkeby率いる、スウェーデンのディプレッシヴ・ブラック・メタル・バンドとは縁もゆかりもないノルウェーの5人組による通算5作目。過去の作品は未聴。当初はアコースティック・ジャズを演奏していたものの、その後メンバーのデス・メタル好きが反映されて現在の音楽性に辿り着いたということですが、いったいどうやったらジャズからこんな音に行き着くのかと思ってしまうほどにジャズの面影はほとんど消え去ってしまっており、デス、インダストリアル、ポスト・パンク、プログレなどをごちゃ混ぜにしてハイ・テンションで吐き出したかのようなカオティックな音像が全編で展開されており、冒頭からその驚異的なテンションの前にみるみるうちに引きずり込まれていきます。特にMESHUGGAH + SQUAREPUSHERと表現できる、圧殺リフとせわしなく動き回るビートが交錯する"Blackjazz Deathtrance"は圧巻としか言いようがありません。

今作ではラストに"21st Century Schizoid Man"の異常にノイジーな凶悪カヴァーを収録していますが、これは「'69年のKING CRIMSONが今存在していたら、きっとこんな音を出していただろう」という解釈も可能であり、彼らが今作で表現しているのはロックとジャズが渾然一体となった初期プログ・ロックのスピリットを現代の視点で解釈したものといえるかもしれません。マイク・ポートノイがこっそりチェックして年間アルバム・ベスト10にしれっと入れていそうなアルバムです。

 
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RATING: 8.5/10

「春のクラシック・メタル祭り」の第2弾はLA出身ながら80年代初頭のNWOBHMへの憧憬を正面切って打ち出した音を鳴らす5人組による1stフルレンスです。昨年のEP「High Speed GTO」リリース後にジョン・レオン(B)以外の全員が脱退し、いきなりバンド存続の危機に立たされましたが、即座にバンドを再建してフル・アルバムのリリースに漕ぎ着けました。EPの時点では主にヴォーカル面でメロウな甘さが目立ちましたが、メンバー・チェンジにより安易な泣きの要素が排除され、MAIDENPRIEST直系の剛球一直線なスタイルに方向性が絞り込まれました。目新しさは皆無ですが、単なるノスタルジーに終わらせない熱さがストレートに伝わります。限定盤に収められたボーナス・カヴァーの選曲がCLOVEN HOOFというのがまた渋い。日本における伝統的なHM/HR原理主義者達に手放しで絶賛される光景が容易に想像できますが、そんなムードに対して完全に距離を置く僕も、このアルバムは素直に格好良いと思いました。昨年のSTEEL PANTHERもそうでしたが、バンドが本気でこういう音が好きだという想いがリアルに伝わってくるからであり、このイノセンスを次作以降どこまで維持できるか、それが今後のポイントといえそうです。
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